四谷四丁目の名所旧跡の一つに『田安鎮護稲荷神社』があります。『田安鎮護稲荷神社』は、二つの稲荷神社を合祀
したものであり、一つは田安稲荷神社、もう一つは鎮護稲荷神社です。田安稲荷神社は、8代将軍、徳川吉宗公の次男
宗武が、1729 年(享保14)田安家の家祖となり江戸城北の丸に居を構え、今から259 年前の1756 年(宝暦6)に現、四
谷四丁目交差点付近一帯に下屋敷を造りました。その際、田安稲荷神社を田安徳川家の屋敷神様として、代々の当主の
崇敬深く、子孫繁栄、天下泰平を願って、お祀りしたのが最初と言われております。田安家は、一橋家(家祖は徳川
宗尹(むねただ)、吉宗の四男)、清水家(家祖は徳川重好(しげよし)、9代将軍徳川家重の次男)とともに御三卿(ごさ
んきょう)として、徳川将軍家に後嗣がない場合に将軍の後継者を提供する役割を担っておりました。
〜田安稲荷神社(田安家)の家祖、徳川宗武は、文武に優れ、将軍候補でもありました!!〜
9代将軍徳川家重は、吉宗の長男でありましたが、生来、虚弱体
質の上、言葉がうまく話せなかったと言います。その為、文武に
優れていると評判であった次男の徳川(田安)宗武を将軍に推す声もありまし
たが、徳川家の御法「長子相続」によって、
家重が、9代将軍に就きました。田安家の所領は10
万石で、宗武は、幼少より聡明で、国学を学び和
歌をよくする好学の家系でありました。しかし嫡
子の2 代当主治察(はるさと)が病弱で早世、子
どももいなかった為、御三卿の当主に子供がい
ない場合は相続が認められないことから、以
降の田安家に宗武の血筋は伝えられず、将軍を出
すことができませんでした。治察の死後、一橋
家の徳川治済(はるさだ)の五男斉匡(なり
まさ)(11 代将軍徳川家斉の弟)が相続する
までの14 年間、田安家は明屋形(無当主)
の状態に置かれました。因みに、江戸時代の
三代改革(享保の改革、天保の改革)の一つ寛政
の改革を実施した松平定信は、吉宗の孫にあたり、
宗武の七男で、治察の弟でもありました。その後、
田安家下屋敷は、明治維新後の1871 年(明治4)に政府に上納され、稲荷神社だけが残されましたが、翌年の1872
年(明治5)に跡地に町屋ができ、四谷永住町と名づけられ、以来代々この町に住む人達が大事にお守りをしてきまし
た。撤去された田安家は、その後大田区内に居住され、10代当主徳川達成(さとなり)氏の次男、徳川宗賢(むねまさ)氏が、1981年(昭和56)10月18日、実に120余年ぶりに田安家として、お詣りに来られました。その折、徳川家の家紋(三つ葉葵の紋所)つき幕一張を奉納されました。
〜毎年、2月の二の午(にのうま)の時期に『田安鎮護稲荷神社祭り』を開催しています!!〜
もう一つの鎮護稲荷神社は、徳川将軍家、剣の指南役、柳生家(1万石)の下屋敷にあった稲荷神社で、鎮火招福の守り神様として、家内安全を願って、おまつりしてまいりましたが、田安稲荷神社同様、1871年(明治4)に政府に上納され、戦後、両稲荷神社は、合祀され、『田安鎮護稲荷神社』となりました。
四谷四丁目町会では、毎年、2月の二の午(にのうま)の時期(去年は3月2日(日))に田安鎮護稲荷神社祭り(二の午祭)を行っています。当日は、神社で神事(御払い)を行い、大木戸ひろばでは、神社に奉納する絵馬に願い事を書いたり、餅つき、ゲーム大会など、町民の皆さんにご参加いただき、盛大に行っています。今年も開催予定ございますので、是非、ご参加下さい。立春(今年は2月4日(水))以降の最初の午の日である初午(現在では、2月の最初の午の日のことを指す)の日には、全国各地の稲荷神社で祭礼が行われています(初午祭り)。特に京都伏見の稲荷大社では、稲荷信仰の中心で名高く、この日、初午詣の人々で大いににぎわいます。もともと稲荷は稲生(いなり)の意味であるとされ、農業神でありました。
祭神は宇迦之御魂(うがのみたま)の神で、五穀をつかさどる農業神で、それが後世、商工業、漁業の神にもなっていったと言われます。現在、初午の日には、「正一位稲荷大明神」と書いた赤い幟(のぼり)を立て、赤飯や油揚げを供えるのはキツネが稲荷神の使いであると信じられているからです。また、初午は、江戸時代では、子どもが寺子屋へ入門する日でもありました。二の午は、2月の2回目の午の日、3回目を三の午(さんのうま)と言い、初午に準ずる稲荷の縁日でもあり、これらの日に祭礼を行う地方もあります。 尚、上記内容は四谷四丁目ホームページにも掲載しております。アクセスは下記まで。
http://www.yotsuya4.com または「四谷四丁目町会」で検索して下さい。
参考文献
・写真で綴る五十年誌(四谷四丁目町会発行)他
|
第一回特集「四谷のお祭り」はこちらへ
第二回特集 「四谷大木戸」はこちらへ
第三回特集 「笹寺と服部半蔵」はこちらへ
[編集・構成:宮内 監修:四谷四丁目文化部] Copyright(C) 2007 Yotsuya-Yonchoume All Rights Reserved.
|